皆さん、家を新築するに当たって階段ってちゃんと検討していますでしょうか。
階段にスペースをたくさん使うちゃうと、他の間取りを圧迫するのでなるべく省スペースで考えたくなっちゃうと思うのですがいかがでしょうか。
建売住宅の階段や、注文住宅でも階段について何も要望を出さなかったりすると、だいたい2畳ぐらいのスペースで折り返し階段になっていることが多かったりしますが、
「ちょっとまって!その階段危険じゃないですか?」
そう、家庭内において階段には危険がいっぱい潜んでいるんです。
もしも、注文住宅の計画を進めるにあたって、間取りが確定する直前に、階段の形状が気になっちゃったりすると変更はすごく大変です。
おそらく、階段の形状を変更するとなると、1階と2階の両方に影響が出てしまうので、多分全部作り直しになるか、無理矢理当てはめたへんてこりんな間取りになってしまうことでしょう。
なので、家を作りを始める前に、階段についてはきちんと勉強しておくことが大切で、最初に担当建築士さんに階段はこんな感じでというように要望を出しておくことが重要なんです。
家庭内の事故ってどこで起こるの?
家庭内の事故ってどこで起こるのでしょうか。
まずは、統計を確認した方がよさそうです。
国民生活センターによると、家庭内の事故はガンや交通事故死よりも多いそうです。
発生場所はリビング、キッチン、階段、浴室、庭、という順番になっていて、リビングやキッチンが多いのは容易に想像がつきますが、階段による転落事故もとても多いのです。
事故死の原因は、誤嚥による窒息、溺死、そして三番目に転倒転落事故となっています。
誤嚥を家の間取りで予防することはなかなか難しそうですが、お風呂による溺死や階段での転落事故などは、設計時にちゃんと対策しておけば、事故の起きにくい安全な住宅にすることも可能かと思います。
なので、階段についてしっかりと考察して要望を伝えておくということがとても大切なんですね。
安全な階段とは
では、いったい安全な階段とは一体どの様な階段のでしょうか。
専門家は、蹴上、踏み板、蹴込などがどの位で、形状はどんなのがよいとかあるようですが、素人の私たちがわかる範囲で考えると、要するに
という事な様です。
具体的にいうと傾斜は、在来工法だとだいたい15段から16段上がり位の傾斜が安全みたいです。もちろん、天井高が工法によって変わりますので一概には言えないのですが、だいたいそんな感じで考えてればよいとおもいます。
ちなみに、まる家は16段上がりにしてもらったのでわりと緩やかな階段となっています。
ところが、まる家の実家は13段上がりとなっていました。13段上がりは、はっきり言ってとても急です。
しかも、まる家の実家の階段は上の方で曲がっている階段で、とても危険です。実際、まるちゃんのおばあちゃんは2回もその階段で転落していて、骨折して入院までしました。
とっても危険な階段なんですが、後から変更することもできずに現在もそのままの状態で生活しているのですが、最初にちゃんと設計しておけばよかったと本当に後悔しているようです。
長年暮らす家だからこそ、ちゃんと考えておきたいですよね。
階段の形状によって変わる危険度
階段の傾斜はだいたい15段から16段ぐらいにしておけば良いと思うのですが、問題は階段の形状です。
色々な階段の形状をみて、危険度を検討してみたいと思います。
- 折り返し階段
-
建売住宅などでよく見る、折り返し階段です。2畳ほどのスペースで回り部分も階段になっている物です。
2畳に納めるため、14段上がりが多いですね。
最初4段、30度の三角の階段が6段の後、また4段で合計14段です。
階段自体の専有面積がコンパクトで、間取りを考えやすくてよく採用されています。
しかし、この階段は結構危険です。
階段で一番危ないのは曲がりの部分で、この階段は曲がりの部分が螺旋階段のようになっているため、踏み外す可能性が高い階段となります。
若い人は大丈夫かもしれませんが、お年寄りがいたり、自分が年を取ったりしたら危ない階段になるので、おすすめできません。
-
こちらは、曲がりの部分を60度と30度の組み合わせにしているので、先ほどの階段より、スペースを取りますが、少しだけ危険度が低くなっています。
-
こちらの階段は、45度で曲げていますね。こちらも一番上よりは少し危険度は落ちますが、やはり曲がりがあるのでおすすめはできません。
-
この階段は、曲がり3段の後、踊り場になっています。
この階段はわりと安全な階段と言えます。
曲がりの部分が危ないのは変わりないのですが、危険な曲がりの後すぐに踊り場になっているので、転落しても3段分で止まります。
転落してもダメージの少ない階段だと言えます。
-
この階段はかなり安全な階段です。
曲がり部分が踊り場になっているので、三角の踏み板が無く安全です。
さらに、万が一直線部分で転落したとしても踊り場部分で止まります。
転落しにくく、転落してもダメージが少なく止まる階段だと言えます。おすすめの階段です。
- 曲がり階段
-
この階段は、まる家の実家の階段です。
はっきり言いますが、この階段は大変危険です。やめておいた方がよいと思います。
階段の転落事故は曲がり部分で起きますが、その曲がりが階段の一番上にあるという最悪の作りになっています。
曲がり部分で転落したら一番下まで真っ逆さまです。最もダメージを受ける階段と言えます。
まる家の実家は、この形状でさらに13段上がりと大変急なため、もうほんとに最悪です。
人によっては恐怖を覚える様な感じで、設計士は何でこんな提案をしたのか本当に不思議です。「もう少しちゃんと考えてよ!」っていいたくなっちゃいます。
実際この階段でまるちゃんのおばちゃんは骨折して入院しました。
-
同じ曲げを作るにしてもこちらの方が大分良いと思います。
曲げの部分が階段の一番下にあるので、転落してもダメージが少なく済みます。
どうしても曲げなければならなければ、さっきよりもこの方が絶対よいです。
-
言わなくてもわかると思いますが、この階段はさらに最悪です。階段の上と下に曲げがあるので踏み外す可能性が高く、転落したときのダメージも大きいと思います。
この階段もやめておいた方がよいです。
- 折り階段
-
この階段は安全な階段です。
曲がりの部分に踊り場が来ているので、踏み外す危険性が少なく、万が一転落しても途中で止まるのでダメージが少なくすみます。おすすめの階段ですね。
-
こちらも、安全な階段です。曲げが2カ所ありますがいずれも踊り場になっていますので安全です。しかも転落しても数段で止まりますのでダメージが少なく、おすすめの階段です。
- 直線階段
-
この階段は、階段の中で最も安全な階段です。
階段は直線階段が最も踏み外しを起こしにくく転落のおきにくい安全な階段です。
さらに、途中に踊り場が設けられているので、万が一転落しても途中で止まります。
広いスペースを必要としてしまうので、できるお家は限られてしまいますが、できるならばこの階段が最もおすすめです。
-
直線階段です。鉄砲階段と言ったりもします。
まる家ではこの階段を採用しました。
鉄砲階段は万が一転落した場合、一番下まで落ちてしまうので危険だという事を言う人もいるようですが、実際は鉄砲階段は安全な階段です。
階段による転落はほとんどが曲がりの部分でおきるので、曲がりがない鉄砲階段はそもそも転落事態があまり起きない階段となります。
階段の上り下りも、まっすぐなので目線が安定しており、一定のリズムで登ったり降りたりできるので、ほとんど踏み外したりはしません。
安全を重視した理想型は、一つ上の直線階段の途中に踊り場を設けたものですがのが、それをすると半畳分余計にスペースを使ってしまいます。
直線階段は小ペースと安全性を兼ね備えたバランスの取れた階段だと思います。
おすすめの階段ですね。
まる家は直線階段にしました
色々な形状の階段を見てきましたが、形状によって安全性に違いがあることがわかると思います。
まる家では、スペースと安全性を考えて直線階段を採用しました。
ここでまる家で採用した直線階段のメリットとデメリットをいくつか上げてみたいと思います。
直線階段のメリット
- 曲がりがないので安全かつ省スペース
-
これは上の方でも書きましたが、直線階段は最も転落事故の起きにくい階段です。
曲がりのある階段でもすぐ下が踊り場になっている時は、転落時のダメージが少ないと上の方で書きましたが、よくよく考えると、年を取ってからの転落事故はたとえ1段でも致命的なダメージとなる危険性があります。
元気だったお年寄りが、ちょっと躓いて骨折してしまってそれが致命傷になったっていう話もよく聞きますが、階段の踏み外しはたとえ1段でも大変危険だと思います。
そもそも、踏み外しの起きにくい階段にしておくことが必要だとおもいます。
「踏み外しても数段で止まるから大丈夫」という考え方自体が若い人の考え方なんじゃないかなって思っています。
スペース的にも踊り場がないので、何段上がりにするかによりますが、専有面積の比較的小さくな階段となります。
- 階段昇降機がつけやすい
-
階段昇降機を、老後に階段の上り下りがキツくなってきたときや、親を介護しなければならなくなったときにつけようと考えていました。直線階段は昇降機を最もつけやすい階段です。
まる家は二階にお風呂があるので、生活するためには必ず2階に上がらなければなりません。
なので、まる家ではホームエレベーターか階段昇降機の設置を設計段階から考慮しておかなければなりませんでした。
一応、1階と2階の同じ位置に1畳ほどのクローゼットを揃えてつけていますので、いざとなったらそこにホームエレベーターを設置できると思います。
また、ホームエレベーターまでしなくても、直線階段であれば昇降機を結構簡単につけることができます。
まる家では階段昇降機用に電源も確保しました。隠蔽配線で壁の中に埋め込まれているのですが、昇降機設置時に引き出すことができる様になっています。
価格的にも階段昇降機の方が安いので、老後の備えの一つとして直線階段を採用しました。
- 荷物の搬入、搬出がしやすい
-
曲がりの部分がないので、荷物の搬入搬出がしやすく楽です。
まる家は2階にお風呂とユーティリティスペースを配置しているので、少なくとも2階に洗濯機を持っていかなければなりませんでした。
直線階段は折り返し階段に比べ、家具や大型家電などを搬入しやすいというメリットもあります。
直線階段のデメリット
- 吹き抜けのように音や熱が伝わりやすい
-
直線階段はその構造上、吹き抜けと同じような働きをします。
音も伝わりやすいし、熱も上に逃げやすいです。
特に、まる家のようにリビング階段を採用した場合、その影響は顕著に出ます。
リビング階段は高気密高断熱住宅でなければ、冬に1階が寒く2階の暑い不快な家になってしまいます。
また、1階の音が2階に響きやすいので、よく言えば1階と2階が近く感じ、悪く言えば1階と2階の隔たりがない感じです。
1階と2階が同じ空間にあるといった感じです。
これは好みの問題かもしれません。
- 階下から上が丸見え、階上から下が丸見えになる
-
こちらも、デメリットというより好みの問題かもしれませんが、まる家の直線階段の場合、1階の階段下から2階のホールが見えます。また、2階から見下ろすと1階のダイニングが丸見えです。
上から下まで真っ直ぐな直線階段ならではだと思いますが、折り返し階段なら1階から2階は見えませんし、その逆も見えません。
階段の登り口にトイレなんかあったら1階からトイレのドアが丸見えで、音もまる聞こえになる危険性があるので、間取り的に注意です。
これは、知っていればすぐに防げる事なんですが、知らないと出来上がってみて初めて気づくという事になるので、頭の片隅に入れておいた方がいいと思います。
間取りって、1階と2階バラバラで書かれるので、見落としがちな落とし穴だと思います。
まとめ
いかがでしょうか。
注文住宅で間取りを考える上で、階段の優先順位ってあまり高くないと方が多いと思いますがどうでしょうか。少なくともまる家では階段についてはほとんど考えていませんでした。
幸い、まる家の場合は建築士さんから階段について提案を受けたので検討することが出来ていたのですが、通常は言われるがままの階段をつけると思います。
階段の使いやすさは住み心地の面で、結構大きな影響を与えます。
間取りを作る上で、階段の形状はしっかり検討しなければなならい重要事項だと思います。
まる家の実家のように使いにくい危険な階段を採用してしまっては、その後何十年も不便な生活を強いられます。
階段はとても大切なんです。
さらに、間取りが固まってから階段の形状を変更するのはとても大変なので、早い段階に検討しておかなければなりません。
施主としても、階段についてきちんと勉強して早めに要望を伝えておいた方が賢明だと思います。
コメント
>直線階段は最も転落事故の起きにくい階段
これは私の経験則だけから言えば間違っています。
私は子供の頃に友達の家で急な直線階段を上手く降りられずに転落し、漫画みたいにゴロゴロ転がって下まで落ちたことあります。転がりながら頭や背中を踏み板の縁などの固く鋭利な部分で何度も強打して意識朦朧となりましたが、死ななくて良かったと心底思いました。
いくら踏み外しにくいと言っても、もし一度踏み外したら下まで止まれないので、直線階段は危険極まりない階段です。
どうしても直線階段にするのであれば、
・途中に踊り場2ヶ所
・蹴上がりを小さく
・踏み板奥行きを長く
こういう対策を取らないと非常に危険です。
やはりコの字形で踏み板がまっすぐで踊り場が2ヶ所ある折れ階段が最も安全だと思います。転落しても踊り場で確実に止まりますからね。
日本の米様 コメントありがとうございます。
> 直線階段は危険極まりない階段です。
階段はどの様な形状のものを選んだとしてもある程度の危険はあるかと思います。
しかし、形状によって危険度に差があることも事実です。
記事中にもありますが、階段の転落は回りの部分で起こりやすいと思われます。
そういった意味では直線階段の危険度は低いと思います。
直線階段が「危険極まりない階段」であるとの認識は本当でしょうか?別の見方もありますよという提案です。
フラット35の技術基準でも直線階段は安全性の高い階段として扱われております。
https://www.flat35.com/faq/faq_tech_31.html
記事は住宅の設計をする上で、省スペースと安全性の両方をバランス良く兼ね備えているのが直線階段であるというものです。
記事の冒頭でも触れていますが安全に最も配慮するのであれば直線階段で、できるだけ傾斜を緩やかにして、途中に踊り場を設置し、両側に手摺を設けた方がよいと思います。
しかし、住宅の面積に十分な余裕と十分な資金があるのあればそうすれば良いと思いますが、なかなかそうもできないのが現実です。直線階段は踊り場のない折返し(回り)階段と同じ専有面積ですが、折返し(回り)階段よりもかなり安全でバランスの取れている階段であることには間違いないと思います。
>折返し(回り)階段よりもかなり安全
>鉄砲階段は安全な階段
そう断言するのはマズイと思います。
最初の書き込みにも書きました通り、「踏み外しにくい」と「踏み外さない」では意味が全く異なるからです。
直線階段が「絶対に踏み外さない」のであれば、たしかに最も良い選択肢でしょう。しかし絶対はありません。確率が低くとも踏み出す可能性があるのならば、次に考えるべきは「もし万が一踏み外したときのダメージ」がどれくらいであるかです。ダメージコントロールの話です。
直線でしかも踊り場がなければ、最悪の場合、上から下まで階段の距離全てを転げ落ちます。大ダメージで、大怪我もしくは死ぬ可能性すらあります。
しかし踊り場があれば、最長でもそこまでの距離しか落ちません。踊り場が2ヶ所あれば転落距離(段数)はさらに短くなります。それで死ぬ確率はだいぶ下がるでしょう。
安全性に関することは「フェイルセーフ」という考え方が大事です。
つまり「絶対に安全」ということはありえないのだから、必ずいつか事故が起きるという前提で、もしも事故が起こってしまった場合でもできるだけダメージが少なくなる構造や仕組みにしておくことが大事なのです。詳しくは「フェイルセーフ」でググってみてください。
そういうわけで、「踊り場なしの鉄砲階段」は最悪な階段の一つと言って良いでしょう。フラット35の技術基準はたしかに一つの目安にはなりますが、しょせん役人が形式的に考えたものです。それだけを絶対的に盲信してはいけません。
論点を以下にまとめます。
・まるママ様のフォーカス=転落の発生確率
・私のフォーカス=転落時のダメージ
◎私は転落発生確率がゼロに出来ない以上、ダメージコントロールにフォーカスして「直線でも折れでもいいから、絶対に踊り場ありで踏み板が長方形の緩勾配な階段」がベストと考えます。
まるママ様のブログ記事は非常に丁寧かつ親切な内容で、参考になさる方もたくさんいらっしゃると思います。ですから、もうちょっと深く考え、安易に「これなら安全」と言わずに慎重になさっていただくと、もっと良くなるのではと思います。